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神戸観世会 *「千手」「因幡堂」「鞍馬天狗」のうち、「千手」

あちこち能をみにいったり展覧会を見に行ったりして
いろいろな思いを抱いてかえっているのに
ことばにしてのこさなかったら消えてしまうことが多いので、
すこしでもことばにしておこうとおもいます。
さかのぼってでもことばにしておこうとおもいます。


5月13日(日)
神戸観世会

「千手」

藤井徳三先生が地頭の謡。

勇海楽人(重衡:しげひら)
久田勘鷗(千手)

えい曲之舞という小書き。


千手は謡いのお稽古でも何度か聞いている曲。

鏡の間であわせる調べがいつもとちがって聞こえた。
小鼓はやわらかく、大鼓は控えめで、笛は低く低く咽ぶ泣くかのようだった。

いつもなら囃子方のあとに旅の僧たちがずらずらとでてくることが多い能の筋書きだが、「千手」は違う。
シテの重衡とツレが出てきて、着座しても囃子がなく、ツレの話からはじまる。

処刑前の重衡をあづかっており、慰めに酒を持参した、という設定である。

そこへ頼朝より命をうけた千手という女が訪れる。
千手は重衡が処刑されることを知っている。
会わない、と断られながらも命をうけて来たのだと告げる千手はきり、と覚悟のようなものが感じられる。

妻戸をあけて入るときの、扇での千手の仕草と謡いが非常にうつくしい。(*1)
都人が東へ落ちぶれているところへ、さっと朝光が射すように入り香りたつさまはさながら天人の降臨のようでもある。

しかし、じきに現実の話に戻ってゆく。
出家の願いは認められず、嘆く重衡を歌にてなぐさめる千手。
また酒をすすめ、舞いを舞う。

舞いも決して晴れやかなものでなく、おさえたかなしみが感じられる。
舞いの途中で橋懸りにて涙する千手。

舞い終えるとく重衡は死の時に近づくこと、舞っているときにさまざまな思いが去来する。

もし平家でなければ。
もし平家が負けていなければ。
もし生け捕られていなければ。

どんなにおもっても変えることのできない悲しい未来が決定している。

自分はそれをくつがえすことができない。
今、ひととき、死をひかえた方のこころが安らぐならば、とおもいなおして舞いにもどる。

琴を枕に臥す二人。
対角線上に向かい合い、左手で扇をひらいて枕扇のかたちをとる。
ここの謡いも美しい(*2)

夜があけて重衡は処刑のために出立する。
右角にいた重衡と中央左にいた千手が舞台の中央ですれ違う。
右角にいた重衡は左奥へ。
中央左にいた千手は右奥へ。
ゆっくりすすむ重衡に対し、「袖と袖と」の謡いで千手はつっと立ち止まり、残心をみせる。
ツレがさきだち、重衡が橋懸を進んでゆく様はまさしく死への旅だち。

「げにも目もあてられぬ有様」の謡いで、(*3)
千手は重衡を見送り、長い長いシオリ(うつむいて掌を面にかざす、泣く仕草)をする。
誰にはばかれることもない、深い深い嘆き。

死にゆく者と共に一夜をすごした女人のその後のかなしみはいかばかりか。
おもうだに、頼朝は残酷だともとらえられる。


地謡の声の調和もさることながら、
緩急が非常によく、千手の台詞になり、心情になり、ものがたりになりと変化してゆくさまが
するっとはいってきた。
囃子方の声も音とおなじくまろやかで全くそれぞれの謡いを妨げることがなかった。

千手の面の横顔の見える位置に座っていたのだが、
千手の睫毛がみえ、やわらかい口元がうごいていたようにもおもわれるほどの謡いだった。





(*1)の謡 (仮名補いあり)

その時千手立ち寄りて 妻戸をきりりと押し開く 御簾の追風匂ひ来る 
花の都人に恥ずかしながら見みえん
東(あずま)の果しまで 人の心の奥深き その情けこそ都なれ
花の春 紅葉の秋 誰(た)が思ひ出となりぬらん


(*2)の謡

一樹の影や 一河の水 皆これ他生の縁といふ 白拍子をぞ謡ひける
その時重衡興(きょう)に乗じ その時重衡興に乗じ 琵琶を引き寄せ弾(たん)じ給へば
また玉琴の緒合はせに 合はせて聞けば
峯の松風通ひ来にけり
琴を枕の短夜(みぢかよ)の仮寝(うたたね)
夢も程なく 東雲(しののめ)もほのぼのと 明け渡る空の
あさまにやなりぬべき あさまにやなりなんと 酒宴を止め給ふ御心の中(うち)ぞ痛はしき


(*3)の謡

かくて重衡勅(ちょく)により かくて重衡勅により また都にとありしかば
武士(もののふ)守護し出で給へば
千手も泣く泣く立ち出(い)で
何なかなかの憂き契り はや後朝(きぬぎぬ)に引き離るる袖と袖との露涙
げに重衡の有様(ありさま)目もあてられぬ気色かな 目もあてられぬ気色かな





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by tsukisitau | 2012-06-26 01:27 | つれづれ帖*言葉の風景


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